2026
Vol.4
尾 仲 浩 二 展 「時は流れ、遠い町」
5月28日 - 6月21日

【開館日】
会期中の木・金・土・日曜日
【開催時間】
10:00 - 17:00(最終入館16:30)
【出陳作家】
尾仲浩二 Kouji ONAKA
ベン・シャーン「伝導の書」
尾仲浩二「時は流れ、遠い町」
HOKUBU記念絵画館
高校時代に写真部だった尾仲浩二は、写真家森山大道に憧れ上京しました。しかし前途は多難で、写真学校は卒業したものの写真家になる道も見つけられず「のぞき部屋」でバイトをしながら漠然と暮らしていました。そんな時、偶然かつ運命的に森山大道らが作った自主ギャラリー「CAMP」のメンバーとなることで、思わぬ知遇を得て、写真と関わって生きていく環境を手に入れました。
尾仲が写真家として歩み始めた80年代初頭の日本の写真の状況は、70年代に森山大道に代表されるモノクロームの「アレ、ブレ、ボケ」といった表現を持って、それまでの報道を中心とした写真から自己表現としての写真へと大きく変化した時代の後で、バブル景気と共にコマーシャル写真が隆盛を極めようとしている時代でした。尾仲が憧れていたモノクロのスナップ写真は、もう時代遅れなものと思われていたのでした。
森山の影響を受けすぎていた尾仲は、自分の写真を探すために新宿に個人のギャラリーを作り、そこで毎月のように写真展を開きます。そして日本の各地でスナップショット的な風景を撮るようになります。一杯飲み屋の看板や、再開発から取り残された建物など、それは結果的に過ぎ去りつつある時代の姿を記録することになったのでした。
いま私たちはスマホを使って世界と簡単に繋がることができます。しかし、尾仲は「自分の足で歩き、思わぬ何かと出会い、そして感じて写真に残す」ということを大切にしています。その土地で何に反応してシャッターを切るのか分からないから写真は面白いと言います。尾仲がカメラに収めるのは、懐かしい太陽に照らし出されたもう一つの故郷ともいうべき風景です。それは土地の人々や観光客と馴れ合っている風景ではなく、遠く離れた心の故郷の反映です。それは都会では見出せない陽だまりのような記憶です。過ぎ去った遠い記憶を尾仲の写真は思い出させてくれるかもしれません。
本展は尾仲浩二の活動と成果を三つのフロアに分けて紹介します。それは、その峠、時代の流れが、上を目指しながらも螺旋階段のように同じ関心に戻ってくるものです。時間と場所を超えて浮かび上がる尾仲浩二の目を感じていただければと思います。
樋勝朋己 バスに乗っていくから
