2018

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目をつぶり感じるもの

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 【 会 期 】     2018年5月3日(土) - 6月24日(日) 

【 会 期 】        HOUBU記念絵画館

【 開館日 】   会期中の〔木〕〔金〕〔土〕〔日〕曜日

【展示作家】    坂部隆芳、本荘赳、村井貴久子 他
 

碧澤(宮ケ瀬渓谷)-本荘赳ほんじょうたけし.jpg
無題-村井貴久子.jpg
山並秋色-高橋美則2.JPG

現代は、信じ難いほど人間が人間的な休息をはばまれている気がします。休むことも終わることも知らない文明が、あらゆる種類の波瀾曲折によってのさばり、静穏が刺激に席をゆずったからです。インターネットやスマートフォンで地球はぐるぐる回っていますが、情報に振り回される私たちは気の休まる暇がありません。

そういう世界のなかに生きているものとして画家は、人間を休息させる絵画を作り出してきました。そして各時代の画家がそうであるように、自分自身をも広々とした海を横切るような創造の翼のもとに庇護してきたのです。椅子や寝台に身をひそめて、静かに呼吸する瞬間をとらえた絵画や、春の夕べや、太陽のかかる水平線を描いた絵画などは、人間を無我の境地につれていってくれるものです。それは、穏やかで、まどろむような魅力があり、人間を無念夢想にするには、透き通った美しい仕掛けしかあるまいと、色の上に色を重ね全体を淡い色調にしていきます。

それは、人間が内的平穏の状態に達し、ついに自分自身へ帰り着いた瞑想の境地です。

ところで、瞑想という響きにはひとの心をひきつけるおおらかな味わいがあります。それゆえ、心の中にうごめく自分が、頭の中はすっきり整っている方がよろしい、と理解するのです。ものの本が教えるところでは、気持ちのいい場所にいることをイメージすることが瞑想に意識を向ける手助けになります。ただ、目をつぶって、今いる汚れた大地が、楽園にほかならないと楽観的に感じるのは、心理的に抵抗の多いことかもしれません。たしかに文明の技術的進歩は、骨の折れない形で環境をコントロールすることを容易にしてくれました。しかし、文明が善とみなすものは、能率や生産という価値観の前では、悪であることを百も承知で間違った選択することを我々は知っています。それだけになおさら、文明という分別からの脱皮の手続きを我々はしなくてはならないのです。それは、戦争や原発事故という社会的で科学的な経験の中で、洗い出された良心や愁いを悪びれずに反省してみる境地にほかなりません。

狭苦しい我が国で、この負の連鎖を止めるには、まずは目をつむる努力をすることです。ゆがめられた知的な力や、あるがままの道徳的なかたよりは、善も悪もない、純粋無垢な自由によって円融な自己に到達できるというのが東洋に源を発する思想です。今日の人間が経験する苦悩は、娯楽生活に身を浸すだけで手軽に片づけられるものではないのです。テレビやインターネットもいいですが、現前の境界を忘れ、想像をめぐらす絵画に浸り、出来るのならばずっしり重い現代を身軽に改善したいものです。そういった日常生活を静かに過ごすことを中心的なテーマに、本展では見るものを瞑想へと優しく誘う絵画を集めました。  

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HOKUBU記念絵画館

HOKUBU Memorial Picture Museum