2026
Vol.08
小西政秀の眼で見た日本近代絵画の歴史 2
11月19日 - 12月27日

【開館日】
会期中の木・金・土・日曜日
【開催時間】
10:00 - 17:00(最終入館16:30)
【出陳作家】
麻生三郎 Saburou ASOU
荻須高徳 Takanori OGISU ほか
麻生三郎「松竹梅」
ベン・シャーン「伝導の書」
小西政秀の眼で見た日本近代絵画の歴史2
HOKUBU記念絵画館
日本文化においては、漫画やイラストが市民権を得てから久しく、現在は大手を振って歩くどころか、芸術としてまかり通っています。芸術の価値観は多様化し、日本文化のイメージとそれに対する考え方も、伝統と流行が一体となって氾濫しているようです。その影響は、西洋の技法を取り入れ、それを崇拝してきた美術表現においても、直接的に、あるいは間接的に認められるものです。それは、新奇をねらい、人目を引くためという必要以上に、画家は自由な発想で日本の伝統や現状を作品の中に盛り込んでいるのです。おそらく、それは現代の流行の中に潜む、日本的な美意識に気が付いた画家たちの新鮮な遊びかもしれません。
伊藤亜矢美の作品は、無駄な説明を廃して、色と形のコンビネーションを意識したものが多くあります。モチーフは普遍的な色と形にまで単純化され、二次元的に見下ろす構図は、ほとんど抽象的とも言えるほどです。その画面は、水平と垂直の安定した構図に、曲線を駆使して量塊の変化をもたらす点に、伊藤の表現の核となる、造形の柔らかさが感じられます。丸いふくらみを持ったキャラクターは、いかにも可愛らしいたたずまいをみせています。無邪気で、まるで童話の世界を見ているような姿の、そのプロポーションと単純化の美学は、それ自体の形式的な美的調整だけで考察すべきではありません。それは、価値観が多様化する社会の中で、個人個人が愛着のあるものにしか興味を示さない時代の立場と合わせて考察すべきです。単純すぎる解釈を恐れずにいえば、母親に育てさせるために、子猫がカワイイくなるのと同じことです。
本展は、その日本美術の特徴的な判断の目安である、外形よりも、イメージを表現のポリシーとする伝統的な芸術観を、近代の洋画などにしみわたる顕著な表現として感じ取ります。そして、それを応用した現代の版画家の作品を通して、「かわいい」や「シンプル」にみられる流行の美意識に思いをめぐらせてもらうものです。
現代の日本文化は子供にまずマンガを与え、しかる後に写生を教え込むという賢明な方針をとっているようですが、歴史の上から見るときこの順序はまさに逆であって、写生的なリアリズムが近世からの導入であるのに対し、マンガ的なイメージ化は日本文化の中で広く知られたものでした。したがって、伊藤の木版画もリアルに描写する必要もなく、かえって簡素化されたマンガのような表現の方が、カワイイという新しい価値観の立場からは都合がいいのだと思います。本展では、日本美術に新鮮な力を吹き込む、このカワイイのもつ形態の巧妙さ鮮やかさに注目します。
