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2021

Vol.03

抽象的であろうとする具象

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時間別予約制

【 会 期 】 2021年5月27(木) - 7月18日(日) 

【 開館日 】 会期中の〔木〕〔金〕〔土〕〔日〕曜日

【展示作家】  大沢昌助  /  高橋幸彦  /  鶴岡義雄 

        富田知子  /  室越健美  /  宮崎 進

表紙 室越健美「花のかたち」

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富田知子「再生」

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高橋幸彦「静物」

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大沢昌助「花」

室越健美の作品に向き合って、まず目に飛び込んでくるのは、東洋的な具象と、装飾的な抽象の和音が奏でる、イメージの世界です。交錯する曲線は、単色の平塗りに近い、精美な背景の上で、いっそう輪郭を強め、その中を交錯するように散りばめられた、フォルムと色彩は、すべての構成要素が呼応しあうことで、色と形の探究にも通じます。しかし、明確な均衡を保った室越の作品は、ただ色と形を美的に並べたものではありません。現実の上で色と形を発見し、そのイメージを非現実な画面の上で集成しながら、あくまでも具体的な対象として再構成するものです。その明快で力強い造形は、構成中心の冷たい抽象絵画とは異なり、健康的な生命力を無邪気なまでに発揮しています。 そんな室越のスタイルは、日本的な情感が西洋の美の中で結実したものかもしれません。それは、対象を輪郭線で捉え、その縁取りの中に着色を施しますが、線を際立たせる色彩のフォルムは、面の起伏よりも、デフォルメ化された線を重視する点に、同時代の西洋絵画からの影響が感じられるからです。具象も抽象も一致すると考えているということなのでしょうか。彼のスタイルは、近代絵画の延長線上にあるもので、やや類型的で、硬い造形の中にも、優れた創造性があり、絵画の表現が、何か特定の出来事ではなく、色と形の在り方そのものが主題となる新たな段階に入ったことを示すものでもあります。

80年代から90年代にかけての日本の洋画は、海外から流入する美術の動向から、いくつもの異なる様式が出現する変化と多様性の時代でしたが、この時期に日本で紹介されたベン・ニコルソンやマーク・ロスコへの関心から、特異な画風を用いる一群の画家たちが現れます。その新しい潮流の中で活躍した室越は、抽象的な構成を具象的な体質の中で結びつけ、その様式の可能性を多様に引き出した画家と言えます。もちろん、輪郭にしろ、色彩にしろ、アイディアとしては当時席巻していた絵画様式とも共通するものですが、その画風は説明的な要素を省き、すっきりと洗練させることで、なにがしかの像がそれなりのリアリティを持って出来上がり、また同時に具象の制限から色と形を解き放っことによって、彼なりの固有の美となって表れたものなのです。 本展は、海外の動向が頻繁に伝えられるようになる時代に、抽象的な傾向が強くなる過程で生まれた日本美術の、具体的な形態を残した半具象と呼ばれる折衷的な様式を通して振り返りながら、具象とも抽象とも言いがたい、謂わば抽象と具象の垣根を越えた範疇に注目するものです。繊細なマチエールと絡み合い、色と形の断片を絶えず抽象化する、その様式は、様々な方向へ分岐し、ジャンルの枠組みを超えて混在累積し、新たな胎動を秘めながら発展しています。抽象的であろうとする具象の美をお楽しみ下さい。

HOKUBU記念絵画館

HOKUBU Memorial Picture Museum

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