【会期】
2023年 6月1日(木) - 7月23日(日)
【開館日】
会期中の木・金・土・日曜日
【開催時間】
10:00 - 17:00
※金・日曜は70分ごとの時間別予約制
※木・土曜は予約不要・終日時間制限なし
【出陳作家】
平野遼 Ryo HIRANO | 佐藤仁敬 Jinkei SATO
佐藤仁敬「Drawing_2019」(チラシ表紙絵)
平野遼「窓」
平野遼「像」
佐藤仁敬「都市とヒトと黒い鳥_2015」
変化する人間の輪郭
食べたものが胃のなかに入ってからどうやって身体の源に変化するのでしょう。簡単に言えば蛋白質の働きです。しかし、人間が食べる牛は草を食べて育ち、その草はエネルギーになる二酸化炭素を光合成で取り入れます。そういう風にさかのぼれば人間は日光のエネルギーを大地を通して獲得しています。大地という途方もない栄養は、人間を作り、生きるためのエネルギーを与えてくれます。
ある宗教では母なる大地が人間の魂を作ると考えていました。神秘の発見のもたらすところは科学と名付けられない人知の程度のころから気づかれていたのでしょう。この考え方は今日でもある意味正しいと思われます。科学の進歩で十分説明がついています。大地にかがみ、目をつぶって異様な形の草をさわったときにも、その進化の足跡というものが浮かんできます。
一方で、ある学者は人間の細胞から、クローン技術によって人間を作れると言っています。進化の歩みはのろいのですが、新しい人間を作る方法が発明されるというのです。我々はその進化に手をそめようとしています。その誘惑に勝てるとは思いません。こうなるともはやそれは人間とはいえませんのかもしれません。それが人間であり得るのはまだ我々の心の中に子供を産むというヒューマニズムの残骸がしこりのように存在しているからです。
かつて人間は、魂が肉体を離れても存在すると信じていました。それは死にたくない、愛する人が生きていて欲しいという願望に支えられていたからです。しかし次第に物質としての肉体の正体があばかれた現実に直面して、現在は魂を宿した人間観の変革を迫られている気がします。そこには神秘的なものはなく、人間の体内に入って変化した蛋白質の塊だけがある気がします。地域的な理由を持った草花の特徴のように、人間は新しい形態を備えるようになりました。
本展はそんな人間の形に鋭敏な感覚を示す佐藤仁敬と平野遼の展示です。